読書感想「空白の日本史」本郷和人

扶桑社から出版(扶桑社新書、2020年1月発行)。

東京大学史料編纂所教授である著者が日本史に潜む空白の歴史を解釈している。

そんな「歴史的空白」を通じて日本の国の成り立ちを改めて考えるに適した本なので興味深く読める。

一般的な教科書や歴史上の人物のイメージとは違った考察や視点が面白い。

日本の国の成り立ちから明治までの歴史思考が主。

日本の歴史は海外からの「外圧」により変わる(第四章の「外交を再考する」)ということや、天皇家の伝統や歴史は海外と対等に外交するための意思表示(第一章「神話の世界」)になっていたことや、日本の独自の「元号」はその国が独立国である証という話は面白かった。

第五章「戦いをマジメに科学する」の章が面白い。

特に、P169~あたりの「明治政府はなぜ徳川慶喜と戦わずに江戸城無血開城したのか」というページが印象に残った。

西郷隆盛は戦って勝者になることを求めていたということ(徳川慶喜に腹を切らせようとしたが江戸のインフラをそのまま手に入れたいので無欠開城)や、「大義名分」を求めていたことなど・・・。

戊辰戦争や西南戦争などのきっかけにも、相手をわざと怒らせて戦いになった。政府が岩村精一郎や世良修蔵といった武士の情けを全く理解しない人物や高慢な交渉人を配置していたということも西郷隆盛は戦いを求めている人物という印象がついた。

第八章「資料がウソをつく」の、歴史上の人物に対する考えや印象というのは歴史研究家と小説家では全く違うということも印象に残った。

・・・というわけで、ざっくりと個人的に印象に残った部分を紹介したが、本書は教科書に載っていないような歴史について知りたい、日本の空白の歴史の考察を知りたい人におすすめである。

この本で木戸孝允(桂小五郎)に非常に興味を持った。

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