2014年に発行された祥伝社新書。
本書は芸術家である著者が147個の芸術に対しての質問に一つ一つ回答している。
芸術家になりたい人や興味がある人、実際に芸術活動をしている人は特に興味深く読めると思う。
全体的に読むと最終的に「芸術は人間活動」なのだなと察する。
人間同士でコミュニケーションをとり、今を懸命に生きる人が理想だということだろうし、人間嫌いだから芸術家になれるわけではなくむしろ人間嫌いはコミュニケーションを放棄しているので芸術家には向かないようだ。
強くて素直な人しか芸術家は務まらない・・・・というのは納得した。
著者が、日本の芸術界よりも世界各地から色々な芸術家が集まるニューヨークの方を活動拠点にした理由も本書を読むと分かってくる。
日本は画家にとって才能を発揮しにくいような環境であるのかと悲しく感じる部分もある・・・。
日本の場合、話題性ばかりを重視したり流行に合わせなくてはならないので大変な世界だと感じた。
画家が日本の流行に振り回されるというのは芸術家にとって自分の本領を発揮しにくいというのが残念なところでもある。
第3章の「古典と現代美術」と第5章「芸術家と画家」、第7章「価値と価格」、第9章「東京とニューヨーク」は芸術に対する考え方が面白く、興味深く読めた。
芸術作品をオークションに出すために売却目的で買う輩がいることについては芸術家にとっては嫌な気分になるだろう。とたやすく想像できる・・・。
作品を気に入って買う人ではなく、高値になることを期待して売買の為に絵画を買う輩は芸術家にとっては嫌な存在でしかない。
本当にその絵が欲しい人にしか売りたくないという画家が殆ど。
オークションで落札されたとしてもそのお金は描いた本人には一銭も入らない。・・・ということは、現代で話題に上がりがちである謎の芸術家であるバンクシーの作品は、オークションでかなりの高値で落札されたとしてもバンクシーには何の得にならないということであるのか・・・・。芸術作品をもてあそぶようなオークションは芸術とかけ離れているというということであるということか・・・。
悲しいことにクールジャパンも人工的な流行だったりするようだ。海外で日本のアニメや漫画が流行っているとしても部分的だろうから皆が皆日本のアニメや漫画を当たり前に知っているわけではない。
「画家になるな」と言われてもなってしまうタイプが画家になるというほどの強さがないと難しいし、画家の世界は相当大変な世界だなと想像してしまう。