読書感想「中高年ひきこもり」藤田孝典

扶桑社新書の本。

 

近年問題となっている中高年のひきこもりの背景、きっかけ、原因などの社会問題が書かれている。

周りから想像してしまうひきこもりのイメージの一例として「時間があればインターネットやゲームばかりしている」といった印象を抱くだろうが、それはひきこもりではない人のほうがネットをする時間が多かったというデータには驚いた・・・。

それについては1章で平成21年と27年の内閣府で実施した「若年の意識に関する調査」、「若者の生活に関する調査」でのデータを取り上げていて、若者の生活や暮らしの実態などを比較・分析していて興味深い内容である。

2章は、ひきこもりの人達の家族構成、ひきこもりのきっかけ、ひきこもりの期間、現在の様子が書かれている。

それぞれの生活背景や性格、家族、取り巻く社会などの不具合がいかに人をひきこもりにするかが知ることが出来る。

3章の「中年ひきこもりが生まれる背景」では、ひきこもりである女性は男性に比べると、家事手伝いや家族の介護という名目で可視化されにくく、ひきこもりの自助会に行けなかったり継続参加も難しいことが書かれている。

女性に特化した相談窓口や支援がないという問題があり、女性の相談員を選べる配慮も必要である。

社会人時代での職場のパワハラ、ブラック企業、リストラにより離職し、ひきこもりになっても働きたいという意欲はあるものの、ひきこもる期間が多くなるにつれて世界観が変わってしまい働かなくてはならないけれど働きたくないという本音が出てくる。

元々ひきこもりではない人がひきこもる原因になったきっかけがブラック企業で働いたからだということもある。

本人の問題ではなく企業の問題で、企業が初めから大量採用し大量離職させる会社のシステムが問題であり、辞めても当たり前であるような会社の労働環境で人間の尊厳を奪う環境や労働環境により、心身共に疲れ果て身を守る為にひきこもりになってしまうわけである・・・。

行政のひきこもり支援が不足し、暴力的な支援業者がはびこることは、まともな行政支援や団体が少ないので、ひきこもりを直してもらいたい一心で家族はそのような暴力的支援業者に頼ってしまう。

行政の相談窓口は看板にすぎず話を聞いてもらえなかったり、挙句の果ては「働きなさい」と就職を勧めてくるのである。

親や家族の無理解、抑圧もひきこもりの原因でもあるようだ。

ひきこもりの親の職業で多いのは教師、医師、看護師であるが、それらの職業には、一つの考えを教条的に信じたり、世間体を気にするので子どもがひきこもりになっても行政に相談に行きたがらないようだ・・・。

4章では「中高年ひきこもりにどう向き合えばよいのか?」が書かれていて、中高年ひきこもりを支援している団体や支援者のことを取り上げている。

・・・・ざっくり印象に残った部分を書いたが、本書を読むとひきこもりの背景が分かるので参考になる。

個人的に思うのは、ひきこもりになる原因は本人というよりも、生まれ育った家族や家庭環境もかかわっているかもしれないと何となくわかる。

社会人になってから仕事を辞めてからひきこもった人の場合は、ブラック企業のシステムの犠牲になったからということであり根性論云々で片付けられない問題であると感じる。

 


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