読書感想「地方都市を考える」貞包秀之

花伝社より、2015年に出版。

この本は、地方都市の過去現在までに至るその歴史や地方都市ならではの問題点や住民の暮らしなどについて「Y市」を一例として考察している。

個人的に印象に残った所は・・・

〇空き家と持ち家

地方都市の持ち家の一般化は祖父母との同居を難しくするとともに、成長した子どもに出ていくことを促している。

近年の高層マンションの建設や新築住宅に比べると古い家は近年の快適で耐震性、耐火性があり、防犯性が高く、バリアフリーにも対応している為、それらの住宅に古い家や空き家は太刀打ちできない。

地方都市で空き家や古い住宅は大都市に比べ地価や家賃が低いので住宅を自ら買い建てる選択ができる為に、地方で空き家があっても魅力がないということ。

〇自家用車がなくては暮らせない地方

地方都市の一世帯当たりの自家用車所有台数が多い為、交通機関を利用することは少なく、交通機関を使う場合は出張や遊びの為に街を離れる時くらいである。

限りある交通手段しかない地方都市では自動車がなければ深刻な状況になってしまう・・・。

自動車を持つ人が多くなればなるほど駐車場が足りなくなる為、駐車場のある場所に住むか、地価がなるべく低い場所である郊外に家を建てて住まなければならなくなる。

駐車場がなければ買い物も難しい為、駐車スペースのない中心街に人が来ることが難しくなる為、駐車場が広く確保できる店となれば、中心街よりも地価が低い場所にあるショッピングモールや国道沿いの店に行くことになってしまう。

〇可能性を求めて都心を目指す人とマイルドヤンキーという地方を愛する若者

地元を愛する「マイルドヤンキー」と揶揄されている若者は大都市に移動しない人生を選び、自分の手持ちの資産と人間関係で人生をやりくりする。

一方自分の可能性を賭けて都心に移住する地方民もいるが、地元を愛すると言われる「マイルドヤンキー」を揶揄している側こそ、自分の生まれ住んでいる場所以外に移住して生きたことがあるのか?というような部分は共感するところがある・・・。

一度もその場所から出ていない人こそ、自分が持っている「手札」だけで生きなければならないという覚悟を持たなければならないのでは?というところ。

特に東京圏で生まれ暮らしてきた場合、東京圏こそ競争率が一番高いということなので覚悟を持たなくてはならない・・・。それを考えれば地元で生きることを自覚している「マイルドヤンキー」と東京圏で暮らしている人は同じようなものなのではないかという部分。

都会に移住することで不利な競争に立ち向かう覚悟を持ってきているリスクを取りながら生きる選択をしなくてはならない地方民の辛さもある・・・。

〇地元と観光アピール

街づくりのしがらみや他の市町村に対抗しなくてはならない。

街づくりにもカーストがあるようだ・・・。

街づくりは自分の通っていた学校の「先輩」「後輩」や人間関係を利用しながらつくられる為、学校時代の人間関係が成人してもなりたってしまう・・・。地元民の一人として生きることのしがらみや、威信を取り戻させる絶好のマウンティングの機会として街づくりは利用される。

自分がまさに地方暮らしの住民である為、この本の内容には共感や納得する部分が多数あったので面白く読めた内容だった。

郊外にショッピングモールができる理由や、車がなければ生活できない住民と駐車場問題はその通りだと感じた。

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