読書感想「伝統とは何か」大塚英志

筑摩書房より、2004年に出版された本。

「伝統」とは昔から「ある」ものではなく「求められ、作られてゆく」側面があるということを著者が検証をしている本。

本書の中では民俗学者の柳田國男、折口信夫、ラフカディオ・ハーンといった人物の思想も所々混じっているため、それらの人物について個人的に興味が湧いた。

印象に残った部分はかなりあって興味深く読むことができた。

印象に残った部分は・・・・

〇明治時代からの血族や血統といった「来歴」がある戸籍というものは、本来なら「奴隷」の人数を記した台帳にすぎず、江戸時代までの戸籍は徴税の為の調査のために家の構成員を記したものだったという。
明治時代から「血統」や「家」にこだわるようになったということで、その時代に生きていた人達は自分の存在に対して「自分はその家の本当の子どもなのか?養子なのか?捨て子なのか?」と悩む人も多かったようだ・・・。

〇「伝統」とは、現代の日本人が欲した「ファンタジー」や「ロマンス」に過ぎない。

〇江戸時代は、家庭の事情で子どもを育てられなく捨てられた子どもがいた場合、そのような子どもを養う手段や養育費をもらえる制度があった。
明治時代以降の現代で起きる「母子心中」というようなどうしても育てられず追い詰められて親子共々命を絶つ事件になるまでいかず、追い詰められずにすんでいた。

〇「日本人」と言うものの、太古の祖先がアジア大陸の色々な人種の混血から成り立っているかも知れないのだが、「純血思想」の憧れやオカルト思想やオカルト文書を用いて政治や宗教などの思想に利用したりされたりすること。

柳田國男という民俗学者の思想も分かる本だった為、柳田國男が好きな人向けの本にも思えた。

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