読書感想「真面目に生きると損をする」池田清彦

KADOKAWAより、2016年に出版。

池田節炸裂の持論・エッセイ的本。本の内容とタイトルがあまり噛み合っていない気がしたので何とかならなかったのかと思う自分。タイトルを考えることは難しいのでしょう・・・。

本書は「池田清彦のやせ我慢日記」2014(7.11)~2106年(2・12)の配信分と再構成のうえ加筆した本ですね。

読んでみた感想と個人的に印象に残った部分

〇健康や寿命にこだわらない・・・「命と味覚どちらが大事か?」と医師に言われた青木淳一さんのカチンときて「味覚に決まってるだろ!」という啖呵をきったというエピソードが良かった。自分がもしも生きていても好きな趣味が出来ないとなれば自分もキレますね(笑)。

〇死ぬことが異常ではなく正常なことである・・・膨大な医療費を使い無為な老後をボケて寝たきりで生きていても家族や社会に迷惑をかけるだけ。正常な加齢を異常にして医療機関の金儲けの為に長生きすることは良くない。

〇大学の研究費・・・国の税金なのでダメそうな研究にはお金を出してもらえない。

〇先生の授業評価をさせることはおかしい・・・教師を頑張らせようとすればするほど教育は悪くなる。先生が楽しそうに授業(講義)をすれば生徒も何か楽しくなってくる(ミラーニューロン効果→相手の行動に共感して、あたかも自分も相手と同じ行動をしているように感じること)。

〇国立大学の授業料の上昇・・・1970年代に入り、国立大の授業料は急上昇した。学歴バブルは親が「我が子を大学に行かせれば自分達より楽な暮らしが出来るに違いない」と入学させるが、大学卒が増えれば増えるほど大卒の価値が下がる。したがってそれ以下の高卒・中卒層は社会の低層に沈んだままになる恐れがあるが、大卒者は資本主義に奉仕する労働者として事務処理さえできれば良く、難しいことを考えなくても良いという指導者層の思惑を実現させているようなもの。

〇温暖化と農薬・・・昆虫の減少は温暖化ではなく樹木の減少だったり農薬のせいであったりする。ミツバチの減少はネオニコチノイド系農薬。日本の農薬の食品残留基準値が大幅に上がった2015年、ホウレンソウの残留農薬基準値が13倍に上がった。農薬会社の儲けが基準になってしまった。ネオニコチノイド系農薬は人間の神経系に影響する為、子供の脳の発達障害(自閉症・ADHD・LD)の原因のようだ。

〇3.11以降の絆や愛国心の強調・・・共感しない他者を攻撃・排除する「自己批判精神」と「繊細な精神」を徹底的に欠く「善良な市民」が共感や同調に喜びを感じ、対立する他者へ憎悪する(ヒトラーのユダヤ人絶滅演説や魔女裁判)。共感出来ない人がむやみに否定されるというのは恐ろしいです・・・。

〇2分の一成人式での親への感謝を促す学校の気持ち悪さ・・・親への感謝が当たり前という意識を強いる学校。親から虐待を受けている子供の存在が目に入っていない。自分を虐待する親に学校が強制的に感謝文を読ませる酷さ。

〇異なる者を理解できなくても構わない・・・自分のことも理解できていない者が他人のことを理解できるとは限らない。

・・・・という文が個人的に印象に残りました。なんだか色々と考えてしまいます。

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