読書感想「昔はよかった病」パオロ・マッツァリーノ

新潮社から、2015年に出版。

イタリア人の著者が、日本の「昔はよかった」と言われがちな部分を否定的にまとめている本。

現代社会と昔を比べ「昔はよかった」という場合があるが、犯罪の統計を見比べるとむしろ今の方が良くなっている。お年寄りは決して善人でもなく弱くはない。大切にしましょうと言われている今の(大体70歳半~)年寄りの若い頃こそ犯罪が多く、善人のように過ごしている恐ろしさを指摘している(←中には善人の年寄りだっていると思うが)。

「自分は正義でやっている」という意識こそが害悪という関東大震災に警察と関係ない「自警団」の暴走で朝鮮人虐殺があったが、朝鮮人だけではなく日本人も被害者だったという・・・。地域パトロールは武装すべきではなく、偏見暴力の正義はフィクションの世界だけでやめるべきとのこと。

「自警団」の犯罪者探しのターゲットになりがちなのが「よそ者」や「町内会に非協力的な者」に向けられていた。

絆をやたら強調しがちな現代だが、絆を強調しすぎるとよそ者が悪人にされたり不審者にされてしまいがちになるが、絆が強すぎる地域が自殺が多いというから、絆やコミュニティーの結びつきが強いとコミュニティーに入れないものが孤独や疎外感を感じてしまうということなのだろう・・・。

江戸と言えば人情というイメージであるが実は現代社会の東京のように住民同士が顔見知りでもなく、近所付き合いもほとんどなかったようだ。

地方から流入する側から見て江戸時代の東京の、絆が強くなくプライバシーも詮索されない同一性を求めない・・・といった場所が魅力的だったりもする。

松尾芭蕉は大阪で有名になり過ぎ、住みにくいと感じたのか江戸に引っ越したというエピソードもある。

「安全・安心」というフレーズに対しても「安心」は危険や異物を徹底的に取り除くまで訪れないから人間不信につながるから危険や異物がゼロにならないことを前提に可能な限り平和的に共存する道を統計・科学的に探ることが安全の道だという。

謝罪ばかりに力を入れる日本は何とかならないものなのか?海外から見た日本は滑稽に見えているのかも知れない。

日本と海外を比較して、日本がいかに素晴らしいのかを見せるテレビ番組や感動を強調しがちなテレビ番組に違和感を感じる人にこの本は向いていると思う。

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