読書感想「新しい道徳」北野武

幻冬舎から2018年に出版。

学校の「道徳」の授業内容を例に挙げ、道徳に対しての疑問を独特の語り口で語っている本。

北野氏独特の文章で内容に引き込まれるのであっという間に読み終わった。

小学校1年生に先生が「いちばん嬉しかったことを書きなさい」に対する疑問で「毎日目新しいものに出会い、好奇心を燃やしているのにわざわざ過去を振り返らせてどうするのか?」という部分と、子供に対して電車などに乗った時にお年寄りに席を譲ることについて「気持ちがいいから譲る」という前置きや理屈を前提に行動しようという教えもおかしいことだという考えに共感した。

「道徳」は時代によってコロコロと変化する。

昔ながらの精神主義は「働きアリを作るには都合が良いが、今の社会に必要な柔軟な想像力を育てるには向いていない」という部分も納得する。

一つの価値観を押し付け子供たちの個性をなぎ倒すということは、昆虫学者・ファーブルの「自由は秩序を作り、強制は無秩序を生む」という言葉を例に挙げ、もしファーブルだったら「机の中はきれいにしましょう」という学校の決まりに反して、捕まえた昆虫を机に入れるファーブルだったなら現代道徳の観点では「不道徳」とみなされたかもしれないといった文も印象的だった。

そして学校の「道徳」の授業では「友達がいることがすばらしい」というような効能に対する反論も良い。

「夢を持て」「自分らしさを生かせ」と学校で言われがちであることについての苦言や、「画家になりたい?バカヤロウ!絵描きで飯が食えるわけがねえだろ!」という見出しの章は個人的に惹きつけられた。

見出しはぎょっとする部分があるが、要するに本当にやりたいことがあったり夢がある人は周りがいくら反対しても追いかけるもので、本人の気が済むのなら否定しないという北野氏の経験も交えた上での考えも印象的。

他にも北野氏独特の語りで「道徳」についての疑問を挙げているので「道徳」に対してやや否定的な気持ちがある人におすすめな本。

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