読書感想「石に刻まれた江戸時代」関根達人

吉川弘文館より2020年に発売された本。

江戸時代の色々な石造物について調べられた本。

石造物は紙に書かれた古文書と違い、硬い石に文字を刻むのが容易ではない為に数が少ない。

石造物に刻まれた歴史やその土地や人物について刻まれた歴史は紙と違い天災や人災などで簡単に失われにくい為に「人々の祈りと願いのメッセージ」がこめられている。

本書では著者が青森県の石造物について多く調べている印象だった。

江戸時代の東北の飢饉供養塔の数が多いこともあり、その惨状が石碑からうかがえるのである。

江戸の4大飢饉は寛永、享保、天明、天保の4大飢饉があるが特に東北地方では甚大被害を受けた。

飢饉供養塔の他に、宝永南海地震での津波犠牲者の供養塔や教訓の刻まれた石造物、浅間山噴火の災害碑、明暦の大火の供養塔、祐天寺にある海難供養碑、永代橋崩落の供養塔、コレラや天然痘、はしか、赤痢などの疫病に関する石造物、遊女の供養塔、小塚原刑場跡地のシンボルである「首切り地蔵」の石仏のことも書かれている。

悲惨な出来事を忘れないでほしい、後世にも知ってほしいという先人の思いが石造物を残し現代に残っている。

道端にひっそりたたずむそれらの石造物や石碑は興味がなければ例え身近に存在していても気づかないかもしれないし、見落とされるかもしれない。

石造物があっても電信柱や看板と同じような風景の一部のような感覚で興味がないまま見過ごしてしまっているだろう。

江戸時代から数百年経った現代に残る石造物は100年前後の寿命を持つ人間と違い、いつまでも歴史を残しているのである。

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