読書感想「私の「貧乏物語」」岩波書店編集部

岩波書店から2016年発売の本。
岩波書店編集部が、各界で活躍している著名人36人のそれぞれの「貧乏物語」をまとめたショートエッセイ集。

貧乏という定義や考えが著名人それぞれだったり、金銭的・物質的・精神的な「貧乏」があり、それらによってもたらされた苦労や苦難、そして貧乏だったからこそ人の気持ちや優しさを知ったりする。

経験談や考えが著名人それぞれなので引き込まれた。
国語の教科書のように分の最後に著者の写真と簡単な経歴等が載っているのでエッセイを読んでさらに興味を持った場合に紹介ページは参考になる。

個人的に印象に残った部分をざっくりと・・・・(著者は敬称略)

安彦良和・・・競争はしたい人がすればいい。相手が欲しいから競争が好きな人は相手が欲しいから競争に誘う。万人が叶うようなものを夢と言わない。

内澤旬子・・・バブル期であっても女性が実家から出て生活するにはカツカツの暮らしだった。女性は結婚か実家暮らしを前提に生きるしかない。女性が自分の力で生きていくことの困難さ。

出久根達郎・・・1982年まで各家庭に米や麦を買う為に必要な「米穀通帳」というものがあったが、著者の家にはそれがなかった。山や川で採って食べていた食べ物が東京では高価だった。

沖藤典子・・・北海道に住んでいた小学生時代、父親の病で一家が困窮。母は手段を択ばず家族を養った。病と貧困の悪循環の恐ろしさ。

井上達夫・・・父親の酒とギャンブルで一家が困窮するも著者は東大に入る。同大学のエリートの先輩の「戦後日本に飢えなどあるはずない」という言葉に疑問。家庭の事情を周囲に理解されなかった。

小坂井敏品・・・大学教授にならず「負け組」を自ら選ぶ。社会で成功しなくても人生にもっと大切なことがある。自分がやらずにいられないことをやる。

ブレイディみかこ・・・バブル期であっても貧困である家庭はあった。進学校である高校では周りと自分の違いに「自分が貧しいことを絶対他人に言わない」と口をつぐむ。英国では貧乏であることを自分のせいにせず怒りに出していることを知り、英国に惹かれ暮らす。

鳥居・・・DV経験、母子家庭等、過酷な環境。DVを受ける女性は自罰的であり自分が悪いと思いがちでDV相手の元に行ってしまう。

短い文であるがそれぞれの経験を分かりやすく知ることができた。
過酷な経験は読んだ後色々考えさせられた。

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