読書感想「カランコロン漂泊記」水木しげる

水木しげる・著、小学館発行の活字エッセイと漫画エッセイ。

文庫版を2010年に新装版として刊行された。

幼少の頃や14歳で出兵した戦時の話等が興味深く読めた。

印象に残った部分等

  • P23「幸運と不幸」・・・世の中には幸運な人と不幸な人がいて自分以外の「ある力」によって左右されている気がするという話。
  • p50「おとっつぁん」・・・父が美と芸術を愛し、平和主義であった。成績が悪くても怒ることもなかったようだ。変わり者の父であったようだ。
  • P78「マチュチェル」・・・水木氏が戦争時に腕を負傷した時に現地の原住民の老人に親切にされたという話。
  • P81「今村大将」・・・ラバウルに戦争で身体障害者になった兵隊になった水木氏は「名誉軍人部」にいた。そこに視察に来た今村大将は軍人としてはニコニコし温かいおじさんであった。戦後に戦犯として扱われ自決するも何度も失敗し、内地に帰ると自分の一生を書き83歳で他界したという話。
  • P156「従軍慰安婦」・・・戦地に従軍慰安婦にいる「ピー屋」に並ぶもトイレに駆け込んだ慰安婦の排泄物にこの世の物とは思えないものを見てしまい、兵隊も地獄に行くが、一人で80人さばかなくてはならないほうもそれ以上に地獄ではないかという話。
  • P164「リンバイ」・・・戦時の引揚者寮にいた男に付き添いで病院に行った水木氏は、性病の恐ろしさを見る。淋病と梅毒という「リンバイ」という病気が多かったという話。
  • p214「睡眠力」・・・小学校の頃学校に一時間遅刻するほど睡眠が好きだった。しかも軍隊にいた時もそうだったようだ。
  • P238「猫」・・・猫を飼うことになった水木氏。猫を観察し猫に話しかけ想像上であるだろうが、猫との会話内容が印象的。
  • P262「戦争論」・・・小林よしのり氏の本が話題になっていた頃だろう、水木氏は戦争について考える・・・。当時、平和主義の父すら日本軍の勇ましさや勝利の知らせに大喜びし、とにかく「勇ましさ」や「大和魂」というものを好んだ。日本軍の趣味である「ビンタ」が強い秘密であるという水木氏が、人一倍ビンタを受けたことが軍隊や日本陸軍ひいては日本までも嫌になったという話は実体験に基づいた話である。勇ましさでどんな目にあうのかを考えさせる。

水木氏の幼いころの思い出話や出兵した時の話は非常に貴重だと思った。

この本は「ビッグコミック」に1997年に活字エッセイ、1999年に漫画エッセイが掲載されていた。

「ビックコミック」は青年漫画雑誌なので「意外だな」と思った。

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