読書感想「天災から日本史を読みなおす」磯田道史

中央公論新社から2014年発売。

著者が日本の自然災害の歴史を古文書や体験談を調べ通した本。

過去に起きた自然災害の歴史を知ることでこれから起きるかもしれない自然災害を考えさせられる本。
時折、歴史の書物を求める著者の臨場感あふれる描写が謎解きをする過程や人との何気ないやり取りがなんか良い(忍者についての話を聞きに行った時にせんべいを勧められたが古文書にせんべいが落ちたらと思ったので食べなかったとかいうくだりとか好き)。

個人的に印象に残った部分は・・・

〇豊臣秀吉の政権の崩壊は伏見地震が引き金
部下が秀吉に対し、不満を持っていたことや朝鮮出兵の疲れや秀吉に家族を殺された大名たちの恨みが地震をきっかけに秀吉から徳川家康に人心が移った。

地震で秀吉の安否を無視し、家康に地震見舞いに行った最上義光。

秀吉政権と伏見地震の話を読むと豊臣秀吉が酷い人物に感じる・・・・。

〇宝永地震と富士山の噴火
富士山の噴火前の空振は地が揺れずドロドロ鳴り、戸がガタガタした強くない揺れが6時間。その後に「降りもの」があり、空は暗くなったというもので、その5日後に噴火し、江戸にも灰が12日間降ったとの記録・・・。

筆まめな秋田藩(久保田藩)の佐竹という殿様の日記のようなものを探すのはすごいものだ。

〇江戸時代、津波で逃げる時、何よりも「考(親孝行)」が優先され、年老いた祖父母を助け、子は見捨てられた。

〇全国を襲った宝永津波は大阪にも津波をもたらした。
大阪は標高5メートル未満の低地でそこに人口が集中している為に被害を受ける危険がある。

〇土砂崩れ火山灰は水を吸収するが、粘土を含む上部は水が勢いよく流れ、上層ごと押し流すので危険。
火山灰の急傾斜地で住宅を建てるべきではない。
古文書を調べることが大事である。江戸時代の書物では「土砂崩れ」という言葉はなく「山崩」と書かれているようだ。

〇震災弱者は高齢者、子ども、妊婦、幼子連れの母である。
特に犠牲になる母子は子どもが5歳以下。5歳児の子どもを背負うと平均17.5キロである為逃げることが非常に困難になる。

過去の津波被害者はわが子(娘)を海の近くに嫁がせたくないという思いを抱く。
海に近ければ近い程、命が危険である。

〇東日本大震災(3.11)で岩手県陸前高田の津波でたった一本残った松が「奇跡の一本松」と称されたが、松林は津波になぎ倒されやすく、流された松が建物を破壊したことを考えるべきであるという。

松が植えていない場所がむしろ被害が少なかったという。
大地に根付かない木は津波で流されてしまう。

・・・・・他にも自然災害の被害場所かどうかを調べるにはその土地の歴史や古文書を調べることである。
特に近年の「美しいイメージ地名」の旧名を調べてみる。

それと津波で非難する時は逃げたら戻らない。30センチ以上の津波で身動きが取れなくなる。

自然災害が起きた時を想定して前もって誰がどうするか、避難先はどこにするかを決めたりすることが必要である。

自然災害の憂き目にあいやすい日本。
自然災害での被災は辛いものなので、住む場所は妥協したくないものだし、住んでいる場所や土地柄も調べることが良いのだが、理想的な土地がなかなか見つからない日本では完全に安心な場所というものはないと思ったりする自分。

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